4-2 さまざまな商標(1)
1.商号と商標
商号
商号は、事業主の名称とされています。
そのため、文字で書き、口で音読できるものである必要があります。
また、一事業主は一つしか持てません。
商号は、各都道府県内に複数設置されている法務局で登記を行います。
商標
商標は、商品やサービスの識別のための標識なので、文字以外の図形や紋様、記号を用いることができます。また、いくつでも所有することができます。
ただし、出願(申請)したものがすべて登録になるわけではなく、特許庁で審査を経て登録を受ける必要があります。
また、平成18年5月に会社法が施行され、商法が改正されました。
商法の改正により、同一地域内であっても、類似した商号を登記することができるようになりました。
近くに同じ商号の店ができた
極端な例になりますが「アーバン菓子店」というお店の隣に、「アーバン菓子店」という同名のお店が設立されることがあります。
「アーバン菓子店」という商号を持っている、古い「アーバン菓子店」というお店は、新しい「アーバン菓子店」というお店に対して、使用を中止させることができる可能性はあります。しかし、新しいお店が「不正の目的」を持っていることを、古いお店が証明する必要があります。この証明はなかなか大変です。
もし、古い「アーバン菓子店」というお店が、予め「アーバン菓子店」という商標権を取得していれば、新しい「アーバン菓子店」というお店ができたとしても、名前を使用して営業することを差止めることが簡単に行えます。
商号と商標の比較
商 号 | 商 標 | |
---|---|---|
法 律 | 商法・会社法 | 商標 |
識別対象 | 事業者の名称 | 商品やサービス |
使用できる標識 | 文字のみ | 文字に加えて図形・ 紋様・記号も使用可能 |
個 数 | 一営業者につき一つ | 制限なし |
他人の営業の差止 | 困難 | 容易 |
取 得 | 登記のみ (原則許可される) | 特許庁による審査あり (すべて登録ではない!) |
2.ネーミングと商標
商品やサービスのネーミングを考えても、その商品やサービスに近い分野でそのネーミングがすでに商標登録されていると、使用できません。
そのネーミングを予定通り使用してしまうと、商標権を侵害したとして、訴えられてしまいます。
たとえ、そんな商標権があることを知らず、真似しようと考えていなかったとしても、法律違反になってしまいます。
また、考えたネーミングは商標登録してから使用しないと、有名になった後で「他の誰かにそのネーミングを使用されること」を止めることは困難です。
ネーミングを考えたなら、商標調査
ネーミングを使う前に、商標登録出願
これをお忘れなく!
3.タイトル(題名)と商標
商標を本や小説のタイトルに使用することは、商標的使用とはならないと考えられています。
例えば、「どうして売れる ルイ・ヴィトン」という本は、「ルイ・ヴィトン」の商標権を侵害していないと考えられますし、「シャネル 最強ブランドの秘密」という本は、「シャネル」の商標権を侵害していないと考えられます。これは、本のタイトルなので、商標としての使用ではないと考えられているからです。
一方、新聞、雑誌や出版社の名前は、商標としての使用となります。ですので、雑誌を創刊する際には、他人の商標権に注意しなくてはなりません。
もちろん、有名ブランドの名前を使用すると、商標権を侵害することになる可能性が高いです。