6-1 海外での商標権


1.外国に商品を輸出する前に

外国での輸出商品トラブル

加藤さんは、アメリカに商標権を持たずに、ある商品を「アーバン」という名前で輸出しました。幸い、輸出は順調で、アメリカでも「アーバン」が有名になりそうです。

しかし、アメリカのAさんが、「アーバン」が有名になりそうなのを見て、ある商品に「アーバン」というマークをつけて粗悪品を売り始めました。 
さらにアメリカのBさんは、「アーバン」をアメリカの特許庁に出願しました。そして、加藤さんにアメリカに輸出するなと言ってきました。 

しかし、AさんとBさんの行為に、日本の商標権は無力なのです
まず、日本の商標権に基づいて、Aさんの販売を中止させることはできません。Aさんの販売を中止させるためには、加藤さんがアメリカで「アーバン」という商標権を取得する必要があります。しかし、Bさんの出願が邪魔をして、加藤さんのアメリカでの出願はうまく行きません。 

Bさんの出願を取り消すためには、国によって異なりますが、アメリカで「アーバン」が有名なことを証明する証拠を集める必要があります。また、これまでどおりにアメリカに輸出を続けるためだけでも、過去の輸出の際に「アーバン」を用いていたことと、過去の輸出実績などを証明する証拠を集める必要があります

日本の商標権は、日本国内にのみ効力があります。
日本の加藤さんが、日本で「アーバン」という商標を有していたとしても、 他人がアメリカで「アーバン」という商標を使用することを止めることはできません

このようなトラブルを回避するためにも、輸出前に外国での商標出願を行いましょう。

2.模倣品の輸入を阻止するために

模倣品の輸入

時計メーカーのAさんの商標「○○」は、地道な営業活動と高い品質が認められ、次第に有名になってきました。しかしながら、日本国内で模倣品が取引されているようです。Aさんが調査した結果、日本ではないX国でBさんが製造しているようです

Aさんは、前もってX国にて、商標権を取得していたため、Bさんに対して製造の中止などを求めました。しかし、裁判の結果が出るのは時間がかかるうえ、現在すでにBさんが製造した模倣品がX国内の市場に出回っており、それらが日本に輸入されることも十分に考えられます。

そこで、Aさんは、日本への模倣品の輸入を食い止めるため、税関に対して「輸入差止申立」を行いました。Aさんは、申立ての中に、真正品と模倣品の見分け方や、X国のBさんのことを盛り込み、申立ては無事に受理されました。

申立ての受理から数ヵ月後・・・
Aさんの元に、東京税関より、「認定手続」を開始したのと通知が届けられました。東京税関が、模倣品が輸入されようとしているのを発見し、輸入を差し止めるかどうか検討しているのです。
輸入者は、特に争う姿勢を見せなかったため、模倣品は商標権の侵害品と認定され、Aさんの下には「認定通知書」が届き、模倣品の輸入を、水際でストップすることができました
その数ヵ月後、模倣品は、税関で没収され、処分されました。

「輸入差止申立」制度 は、自己の権利を侵害すると認める貨物が輸入されようとする場合に、税関長に対し、当該貨物の輸入を差止め、認定手続を執るべきことを申し立てる制度です。
簡単に言えば、この商標をつけた商品を注意して確認してくださいと税関にお願いする制度といえるかもしれません